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――公演二日前に、酒を飲んでいる。突発的に、後輩にブログを書かないかと進められて、今こうやって手を動かしている。
不思議なもので、卒業するというのに、根本的生活は変わっていない。卒業するならば、引っ越しやら、手続きやらで忙しいものだと思うが、私の場合、生活というものはそんなに急には変わらない。いや、もともと人間というものは、急には変われない動物なのかもしれない。――

脚本を書きました藤堂です。

演出から「演劇的に無理がある」といわれましたが、今その脚本で演劇をやっているのだから、無理があったわけではないのでしょう。演出が無理をしたのかもしれません。それは、見てみないとわかりません。ということで、見に来てください。(無駄な宣伝)

この脚本を書こうと思ったのは、去年の12月。卒業公演の打ち合わせどうするかという話し合いの時でした。

「あ、書こうかな。というか、書ける気がする。」

と、なぜか思ってしまったからなんですね。そのあと、私は正月を返上して、卒論さえも返上してこの脚本に向き合うことになったのです。
様々な人に、多種多様な質問をしました。

「全く興味のない人間から、『好きだ』といわれ抱きつかれたらどういう反応をするか」

という質問はかなり多くの人を悩ませました。私自身、この質問を長時間考えたわけですから。好きという、ポジティブな感情と、全く興味のないというネガティブな感情。この相反する感情を、人間はコントロールすることができるのか・・・。私なりには、結論出したつもりですが、みなさんはどう考えているでしょう?

「はこのなかで」は、私の文章らしく、タイトルから決まりました。そしてハートフルラブリーコメディーとして書いたつもりです。周りからは「んな、あほな!」といわれていますが、いまだに私の中ではそう思っていますし、そうだと思っています。見ればたぶん、わかると思います!(露骨な宣伝)

さて、これ以上かくとネタバレになりそうなので、やめたいと思います。ですが、全く関係のない物語を一つ。
この脚本を書くにあたり、多大なお世話になった方々に、私のできる最大限の感謝を。

L氏は、わが研究室の代表で、いろいろな研究のアドバイスや叱咤激励をしていただきました。もしL氏が人工知能について研究しないかと言わなかったら、私は、この脚本を書くことできなかったでしょう。

M氏は、別の大学の知り合いです。哲学的な質問や、私の論文の日本語修正などを頼んだりしました。哲学的な見分は、M氏から入手しました。私の哲学的な思考形成は、あなたのアドバイスのもとで育まれたと思います。本当にありがとう。

K氏は、私の精神的援助(謎の言葉)をしていただきました。本当にいろいろ助かりました。へばっているときでさえ元気づけてもらいました。本当に、ありがとう。これからもよろしく。

そのほかにも、様々な方々に感謝です。ありがとうございます。

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高度30000フィートは、本当に寒い。特にマッハで飛んでいると、現実と空想の境目がわからない。

「そんな馬鹿な。早く飛行場に戻りましょう。」

宮本武はその声に平常心を取り戻した。

「すまない。今、考えことをしていた。」
「何を言っているんです、今オートパイロットで飛行中ですが、何が起こるかわかりませんよ。」
「そうだったな。」

女性の名は、サラ・マーティン。宮本のバディであり、この戦闘機のエンジニアでもある。

「それにしても、上層部は何を考えているんだろうね、こんなおんぼろ戦闘機で出撃なんてね。」
「悪かったですね。おんぼろで。」
「いや、君が悪いわけじゃ、ない。」
「そうだといいんですけど。」

2045年。もう世界に国という概念は存在していなかった。
どっかの馬鹿が、変な兵器を使い、さらに、どっかの馬鹿が報復で、さらにそれを上回る兵器を使った。そうすると、もう人間は右往左往。
とりあえず、全世界は国を解体させ、国連を中心とする単一国家を急きょ作り上げた。が、旧国家のいざこざは残り、テロが頻発。
宗教やら民族紛争やらもまきこみ、混沌が訪れた。「平和」という言葉は古い本のみにしか書かれていない。

さて、宮本は、爆撃もできるとわれる4・5世代ジェット戦闘機のF-2に乗り込み、テロリストがいるといわれている場所を攻撃したばかりだった。

「しかしまあ、テロリストは意外に近くにいるもんだね。」
「そうですか。」
「そう、俺の故郷。」
「そうなんですか。」
「誰もね、入れないといわれた場所なんだよ。もう断崖絶壁。確かに、外部からの攻撃は受け付けないだろうね。」
「戦闘機なら大丈夫ということですか。」
「まあ、そう判断したんだろうけどね。」
「世界遺産もへったくれもありませんね。」
「そうだな。」

午後4時。雪を頂いた山は、夕焼けを映していた。

「あの夕焼けも変わっていないな。」
「そうですか。」
「この時間、一瞬だけ、いい顔を見せるんだよ。」
「そうなんですか。」
「ああ。夕焼けは、橙だろ。」
「そうですね。」
「でも、この時だけは違うんだ。」
「何がです?」
「冬の空気が澄んで、さらに、天気が良く、もっというなら、雪がいいバランスにある状態・・・。ああ今の状況だ。」
「どこですか。」
「そこだよ。」

右側の窓を宮本はのぞき込む。
ギザギザとした山の稜線が、薄紫のオーロラのようなグラデーションを見せていた。
橙路から、薄紫、太陽の色をすべて雪が反射している。

「これだよ。」
「そうですか。」
「何も思わないんだね。」
「仕方ないですよ。」
「そうか。」

・・・。しばらくの沈黙。

「今日はありがとな。」
「いえ。」
「この出撃は、なんか、悲しいな。」
「そうですか。」
「ああ、俺の故郷だからな。」
「・・・。」

沈黙。その瞬間だった。

「高度25000から、ミサイル!」
「っ!旋回!」

警告が鳴り響き、スーツが締め付けられる。

「ライトターン!どうして!」
「ジャミングでした!うかつでした!」
「今はいい!」
「はい!」
「マックパワー!」

F-2のエンジンがうなりをあげる。衝撃が全体に走る。

「間に合うか!」
「やってます!」

アラートが再びなる。

「もうひとつです!」
「馬鹿な!くそ!故郷だと思って、センチになりすぎた!」
「言い訳はあとです!」
「チャフ!」
「了解!」

チャフが放たれる。やばい。宮本はそう感じた。

「レフトタ―ン!チャフは?」
「もうありません!」
「畜生!」

宮本は焦りつつも、ミサイルは地対空と認識していた。これならいける。宮本は、操縦桿を握り、勝ったと思った。

「チャフがなくても・・・」

爆発音がした。

「クラスタ!?」

機体後方で、爆発。破片は、飛行速度を上回っていた。

「エンジン・ストール!」
「エンジン・リスタート!」
「・・・。かかりません。」
「ほんとか。」

エンジンは、露骨な音を立てて、消えていくのが分かった。

「油圧も漏れています・・・。」
「そうか。」
「すいません。」
「いや、君が誤ることはない。」
「・・・。脱出を。」
「ここは、俺の故郷だ。ここで死ぬなら本望だよ。」
「でも。」
「いいじゃないか。頑張ってコントロールすれば、ぶち当てたやつに、この機体ごとあてることぐらいはできるだろう。」
「・・・。」
「なあ、サラ。」
「はい?」
「君がこの機体について何年だ。」
「3年です。」
「俺と組んで?」
「3年です。」
「長かったな。」
「ええ。」
「同時に短かった。」
「え?」
「ありがとな。」
「どういうことですか?」
「君は、逃げろ。」
「そんな!」

宮本は決心したつもりだった。しかし、震えていた。死というのは、こんなにもあっけないものなのか。そう思うと、よくわからない気持ちになっていた。

「・・・。宮本。震えていますよ。」
「・・・大丈夫だ。」
「そんなことないでしょう。わかっています。」
「君はすべて見てるな。この機体も。俺も。」
「それは、バディですからね。」
「だったら、なおさらだ!さあ!」

風防が火薬で破壊され。勢いよく座席が吹っ飛ぶ。

「・・・なぜだ!」

機体から出たのは、宮本のほうだ。

「サラ!お前!」

その声はもう、サラに届くことはなかった。

「宮本。ありがとう。」

サヨナラと、サラが呟いた。そして、パラシュートが開き、宮本が安堵した時、F-2はすでに地上に激突していた。ちょうど、ミサイルが放たれた場所だった。

2045年12月28日

珍しく宮本の生まれたその地は晴れていた。空は青く。夕焼けはどこまでも焦げるような色だった。

サラ・マーティンは、戦闘機用に作られた高度制御コンピュータであり、操縦者の相棒でもあった。

この日。初めてコンピュータは恋を知った。

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では、みなさん。また逢う日まで。さいなら。すぐ会うけどね。
    2015/03/04(水) 00:58 その他 PERMALINK COM(0)
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