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当ブログをご覧くださり、ありがとうございます。
今回、脚本・演出を務めました、なきがお4年のたけうちです。


この3月22日、第30回・2016年度生 劇団なきがお卒業公演「さらば、ロケットが飛ぶために。」が終演しました。
なんとかやりきることができたのも、支えてくださった団員をはじめ、その保護者やOBOG、今まで足をお運びいただいたお客様方など沢山の方々のお陰です。本当にありがとうございました。


僕ら2016年度生の卒業公演は、「無事に終演しました」などと言うには余りにも波乱の公演でした。
新型コロナウイルスによる影響をモロに受け、他の劇団様の公演も沢山中止になり、学芸の卒業式も中止になってしまうなか、式の2日後であった当団の卒業公演もあえなく無観客での公演となってしまいました。
ご来場を楽しみにしてくださっていた皆さまには、大変申し訳なく思います。


しかし、だからこそ沢山のことができた公演でもありました。
客席を組まなくてよくなったので、仕込み日程に余裕が生まれました。
開演ギリギリまで台詞確認ができました。
上演時間を気にしなくてよくなったので、『馬鹿』が20分くらい伸びました。(貴様アドリブ入れすぎやぞ!)
舞台をいくらか広げました。
音響・照明のオペ室を舞台に近づけました。
YouTubeLiveという新たな試みができました。
客席にビデオカメラを5台くらい置けました。
フリーダムなカメラワークで遊びました。ぺりーが。
客席にお客様がいないからこそできた演出も増やしました。


制約があるからこそできることがある、というのも脚本A『馬鹿』で描きたかったことだったような気がしないでもないんですよね。初稿くらいの頃は。


ではここからは脚本のことをいくらか書いてもいいですか。
長くなる上に、観てないかたにはほとほとどうでもいい話なので、それでもいいかたはコチラを。
脚本を書くとき、ちょっと意識していた言葉があります。
劇団紹介にもある「悲しい涙より、温かい涙を」という言葉。劇団なきがおを表す言葉として僕が入団した頃から使われていましたが、こっちは正直そんなに気にしていませんでした。お涙頂戴モノって昔っから得意じゃなかったんですよね。
それよりも、同じく劇団紹介の「素直な心と言葉を大切にして」という文言が好きでした。フィクションだからこそ、必要以上に取り繕ったセリフよりも、むしろ僕が普段当たり前に思っているなんでもない考えだったり。役者から自然に出たつぶやきくらいの本当の言葉だったり。そういうのでいいんだ、って安心させてくれた一行でした。これは僕が初めて脚本を書いた1年の小金井祭からずっと。

今回の3つの脚本は、僕のねがいだったり悩みだったり、単純にこういうのやってみたら楽しいんじゃないかな~なんていうのも含め、本当に沢山の素直な心と言葉を混ぜ込んで織り込んでつくりました。



脚本A『ただ時間だけが馬鹿みてえに失われていく。』

大学受験も控えた夏。一人として後輩のいない俺ら科学部は、高い高い大宇宙へ飛び立とうとしていた。
そこに降りかかる英コミュの追加課題、突如現れた新1年生、襲い来るダイオキシン!いったい科学部の存続は!?ロケット作成の進捗は!?
全編(ほぼ)フル字幕つきで送る、馬鹿野郎たちの最後の夏ーー。


構想のはじめは、高校化学に染まっていた高3の夏、「メチルオレンジって戦隊もののオレンジっぽくね?」という気づきからでした。
そこからGOLDEN BALLS LIVEに感銘を受けたりやthe@terメトロさんの影響を自然と受けるなどしているうちに、気づけばあの一番馬鹿なシーンの骨組みができあがっていました。
他にも、有川浩の「キケン」が好きで、男子が全力でただ馬鹿やってる楽しさ、その終わりが見える寂しさを描きたいと思ったり、
学芸で教わったとある先生の、「doingを認めるのも大切だけど、beingを認めるのも大切。」という考えを役者に言わせたかったという思いだったり、
しばらくなきがおにいなかったPCテイクよっしーが役者をすると聞いたときに、「文字起こしを演劇に組み込めないか」なんて思い付いたり(タイトルの後ろ3文字はそういうことです)。
本当にやりたい放題を詰め込んだ脚本でした。
お陰で役者たちもやりたい放題やってくれたようで、見るたびに新たな台詞が増えていました。脚本家の手を離れ、彼らの脚本になっていくさまを見ていくのはとても面白かった。最高です。



脚本B『死神の仕事』

命を奪うだけが仕事、なのですか。


正直なところこの脚本、はじめは脚本Cの足掛かりのポジションでしかありませんでした。初稽古のときだったか役者に「エピソードゼロみたいな本だね」と言われたのをよく覚えています。慧眼。
しかし、改稿や役者との脚本読解を重ねるうちいつの間にか色々な挑戦や主張、そして複雑な関係性を孕んだ、思い入れの強い本となりました。
たけうちの頭の中暗い部分を詳細に詳細に書き出していく作業は、かなり苦しさも(2019小金井祭ほどではないにしろ)ありましたが、本当に楽しかった。そのひとつひとつが役者によって大切に大切に音声に紡がれていくのも。
裏話としては、初稿では宏美さん(女)が秀樹さん(男)として描かれていたところなんか面白いんじゃないでしょうか。キャスティングの時点で女6人芝居だったのにな。
「元旦那の秀樹」という設定から「義姉の宏美」という設定に置き換わる会議がまあ面白かった。しかもその会議が脚本上ハッキリと示されないのも楽しい。観てくださったかた、あの説明でどこまで見抜けたんでしょう。




脚本C『第一エンジンが落っこちて、』

エンジンプログラム部に勤めて2年目となった瀬戸。人数の少ない職場にちょっと苦手な先輩。居心地の悪さを感じていた瀬戸のもとに、ちょっと迷惑な後輩ロボット「ベガ」が現れて……
春風とともに消えていった、ベガよ、さらば。

ーーずっと、ってわけには、いかないです。



卒業公演、として書く脚本。最初から大きなテーマは「別れ」だと決めていました。
しかし、ただ悲しいだけの別れでも、笑ってサヨナラでもなく、自分を成長させてくれるお別れ。
その点で、1年の頃の小金井祭で扱った「ロケット」というモチーフは素敵だなと思いました。ブースターとしての第一エンジンがなければロケットは飛び上がれないし、その第一エンジンを本体から切り離さないとやはりロケットは宇宙へ飛ぶことができない。
辛いことだけれど、次へ進むためには何かを手放さなければいけない。逆に言えば、別れがあるからこそ高くへ飛んでいける。そう信じたいのです。

でも、別れがあるからといって、ひとりっきりになるわけではない。自分が目を向けていないだけで、他にも沢山の人が味方でいてくれる。
その一人また一人の手を必要としなくなったとき、僕は成長できているといいな。


あなたのお陰で、ぼくはあなたが必要なくなりました。本当にありがとうございました。そう言える日が来るように。




この公演をもって、僕ら2016年度生は劇団なきがおを卒業します。
別れは寂しいし、今後を考えると不安でいっぱいです。
でも、これまでの長い長い時間とそれに付随する沢山の別れが、決して無駄じゃなかったと言えるように。


最後に、たけうちの自己満足とも言えるようなこの公演を、一緒になって作り上げてくれた、みんなの満足に昇華させてくれたなきがおの皆に、最大限の感謝を。


バイバイ。お元気で。


2020.3.31 劇団なきがお4年 たけうちでした。
    2020/03/31(火) 21:02 第30回公演 PERMALINK COM(0)
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